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DXの強い味方!it導入補助金ほか補助金・助成金を紹介
目次
昨今、さまざまな業界でのDXに関する取り組みが行われており、中小企業でも必要性が高まっています。しかし、資金に乏しい中小企業では、意欲はあるものの、なかなか手をつけることができていないという会社も多いでしょう。そういった中小企業を後押しし、海外企業に対する産業の競争力を確保するため、政府はDX関連の支援メニューを続々と打ち出しています。今回は、これから業務のDXに取り組もうと考えている中小企業様を対象に、使えるIT導入補助金ほか補助金・助成金についてお伝えします。この記事を読んでいただくことで、低コストでより効果の高い取り組みを行うことが可能になります。
DXとは
DXは、デジタル技術を活用して企業が自社のビジネスモデル、サービス、製品、プロセス、文化などを変革し、顧客と社会のニーズに合わせた新しい価値を提供することで、競争上の優位性を確立することを目的としています。経済産業省が定義したDXの定義にも、「製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」という変革の観点が明確に示されています。DXは、単にデジタル技術を利用することではなく、デジタル技術を活用した組織変革、ビジネスモデル変革、文化変革など、より幅広い視野で取り組むことが必要です。
DXをするために必要なこと
経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」において、DX推進のために欠かせない取り組みとして、経営戦略・ビジョンの提示、経営トップのコミットメント、DX推進のための体制整備、投資等の意思決定のあり方、スピーディーな変化への対応力が挙げられています。また、DXは単にIT機器やシステムの導入に留まらず、ビジネスモデルの革新や業務の最適化、文化の変革など、より幅広い視野で取り組むことが必要であり、経営者から現場のスタッフに至るまでの全社的な取り組みが求められることが示されています。
これらは、DXを成功させるために欠かせない重要な要素であり、企業がDXに取り組む際には、これらを考慮して計画を立て、実行していく必要があります。また、DXは一朝一夕にできるものではなく、継続的な取り組みが必要となるため、経営体制や資金面の準備も必要です。
DXの取り組みに掛かる費用
DXには多くのコストがかかることが予想されます。具体的には、社内体制構築費、企画・開発費、宣伝広告費、人材育成費などが挙げられます。そのほか、専門家やコンサルタントの謝金や旅費、社内におけるDX人材の教育費、機械装置・ソフトウェアの導入費やリース費用、設計・構築に係る開発費や外注費、市場調査・構築に係る外注費などが考えられます。
ただし、これらの費用の多くは、補助金や助成金の対象となっているため、補助金や助成金の制度を活用することによって、費用を削減することが可能です。また、企業の技術力や事業の規模、開発期間によっても費用は異なるため、DXの計画段階で予算を見積もり、必要に応じて補助金や助成金を活用することが重要です。
補助金や助成金を申請する際のメリット・デメリット
補助金や助成金を申請する際には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
- 返済不要の資金が手に入れることができる
- 国などから事業内容に対して認められたことになるため、信頼性が向上する
- 補助金等の採択がされた場合、金融機関でもその企業を高く評価するため、融資の取得がしやすくなる可能性がある
デメリット
- 補助金等の採択はコンテスト形式で審査が行われ、全ての企業が受け取れるわけではない
- 申請期限が短いため、スケジュールの調整に失敗すると申請が間に合わなくなる場合がある
- 補助金受領後、会計検査の対象になることがあるため、全般的な会計状況について指摘を受ける可能性がある
DXに使える補助金
次に、DXに関連する補助金について紹介します。補助金を申請するには、申請期間や審査期間などが設けられていますので、DXに取り組むことを決めたら、早めに準備を始めることが重要です。
IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者のITツールの導入を支援する制度です。
IT導入補助金には通常枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型)、セキュリティ対策推進枠に分かれており、それぞれ異なる取り組みを支援しています。特に、インボイス制度への対応やキャッシュレス決済を導入する取り組み、サイバーセキュリティ対策に力を入れる企業を支援するなど、最新のIT技術を導入することで競争力を高める企業を支援しています。
通常枠とセキュリティ対策推進枠では、補助率は1/2以内、デジタル化基盤導入枠では、補助率は3/4以内や2/3以内で、補助額の上限や下限が設定されています。なお、「デジタル化基盤導入枠」では、ハードウェア購入費用も補助対象となっています。
IT導入補助金の申請には、事業計画が必要で、その中で事業実施による労働生産性の伸び率が求められます。通常枠とセキュリティ対策推進枠では、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上を、過去3年間に同補助金の交付を受けた事業者はそれ以上の伸び率が求められます。デジタル化基盤導入枠では、労働生産性の要件は求められていません。
IT導入補助金を活用することで、中小企業や小規模事業者もDXに取り組むことができ、将来に向けたビジネスの強化・成長が期待できます。
ものづくり・商業・サービス補助金
ものづくり・商業・サービス補助金は、DXにも活用できる補助金です。この補助金は、中小企業や小規模事業者が革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
補助率は1/2で、小規模事業者等の場合は2/3です。補助上限は750万円から1,250万円までの範囲です。また、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル展開型」の4つの枠があり、それぞれに異なる補助上限や補助率が設定されています。
事業計画には、3~5年の期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすることが求められます。また、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」には、それぞれに設定された個別の要件を満たす必要があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、DXに適している補助金の1つで、販路開拓の取り組みを支援することを目的としていますが、DXの取り組みにも適用されます。小規模事業者の定義は、業種ごとに異なりますが、商業・サービス業で5名以下、宿泊業・娯楽業を除くサービス業で20名以下、製造業その他の業種で20名以下が該当します。ただし、「通常枠」以外の類型には、それぞれ個別の別途要件も設定されていますので、注意が必要です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、アフターコロナの事業環境を見据えた事業の転換に資するための補助金です。DXの取り組みを含めた事業モデルの変革を支援することができます。補助率や補助金額は、企業の従業員数や事業類型によって異なります。対象者は、売上高の減少や事業転換に取り組んでいること、認定経営革新等支援機関と事業計画を策定していることが求められます。「通常枠」以外の事業類型については、それぞれ別途の要件が設定されているため、注意が必要です。
未来の産業創造に向けた研究成果実用化促進事業
未来の産業創造に向けた研究成果実用化促進事業は、産学協同による新規事業の開発を目的とした助成金であり、1億円以上50億円以下の開発費を支援します。この制度では、成功した場合には、JST(科学技術振興機構)支出額を10年以内に年賦で返済する必要があるという、通常の補助金とは異なる条件が設けられています。
研究開発型スタートアップ支援事業
研究開発型スタートアップ支援事業は、STS(シード期の研究開発型スタートアップ)が、事業化による継続的な売上が期待できる事業計画を持つ場合に、研究開発費などを支援する制度です。助成率は対象費用の2/3までで、助成額は7千万円または2億円以内です。ただし、支援される技術内容には一定の条件があります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のスキルアップやキャリアアップを支援するための制度です。助成金ではなく、一定の要件を満たす企業に対して支援を行います。複数のコースがあり、企業の状況に合わせて適切なコースを選択できます。ただし、コースごとに助成内容が異なります。
サイバーセキュリティ対策促進助成金
サイバーセキュリティ対策促進助成金は、中小企業などがサイバーセキュリティ対策を実施するために必要な設備等の導入費用の一部を助成する制度です。助成率は対象経費の半額で、助成額の上限は1,500万円です。ただし、申請には、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する「SECURITY ACTION」の2段階目(★★ 2つ星)を宣言する必要があります。
まとめ
日本政府は、中小企業や小規模事業者のDX取り組みを支援する様々な制度を設けています。その中でも、IT導入補助金は生産性の向上を目的にしたITツールの導入費用を支援し、最大2年間のクラウド利用料の対象期間延長や安価なITツール導入の支援など、補助下限額の引き下げや撤廃など柔軟な対応がなされています。
中小企業や小規模事業者がIT導入によって生産性向上や業務効率化を図ることで、競争力の強化や成長につながることが期待されています。DXに取り組むことで、新しいビジネスモデルの創出や社会課題の解決につながる可能性があります。中小企業や小規模事業者は、IT導入補助金をはじめとする様々な制度を積極的に活用し、先進的なDXの取り組みを進めていくことが求められています。